2008.12.15(Mon)
腰を痛めないトランスファーテクニック
12月5日(金)とても興味ある研修会に参加しました。
タイトルは「北欧式トランスファーテクニックと介護の労働環境セミナー」
主催は山梨県老人福祉施設協議会です。
講師はデンマーク在住でユーロ・ジャパン・コミュニケーション社代表の
小島ブンゴード孝子さん。学習院大学卒業後、デンマーク人のご主人と結婚、
福祉・医療・子育てなどさまざまな講演やセミナーを開催し、「つらい介護から
やさしい介護へ」などの著書も多数執筆しています。
簡単に言うと、「絶対に持ち上げない!」というのが北欧式トランスファーテクニック
の大切な原則。つまり全く腰に負担をかけない介護の技術ということになります。
この日は、午前中が講演で午後からが実技指導でした。実技指導は時間の
制約と一人ひとり丁寧にとの意向から45人定員で行われ残念ながら私は
参加できませんでした。
そこで、午前中分の講演の抜粋を・・・
まず、北欧式トランスファーには重要な原則が4つあります。
①絶対に持ち上げない!
・垂直方向の負荷は掛けるな。水平な動きに変えよ。
・「引く」か「押す」か「回転」させる。
・少しずつ動かすことを繰り返す。
・持ち上げるしか方法がない時は、機器を使う。
②利用者の積極的な参加
・残存機能の活用
・利用者自身が動くことで介護者の負担が軽減される。
③自然な動き
・その日の体調、機能レベル、環境などにより自然な動きも変化。
・利用者に自然な動きを促し、介護者も自然な動きで介助。
・加齢などで動きの鈍くなった人はその人のテンポに合わせて介助。
④摩擦、てこの原理
・体を動かす際には摩擦がかかるが、摩擦にはポジティブな(利用できる)
摩擦とネガティブな(邪魔になる)摩擦がある。
・トランスファーではポジティブ摩擦は活用、ネガティブは極力取り除く。
・てこの原理はポジにもネガにも働く。これで腰を痛めないように。
■悪いてこ…車いすの坐り直し⇒実は持ち上げている。
支点が介助者の腰 ※瞬間的な腰への負担≒600kg
◎腰を痛めないためにいろいろな道具を使う。
♢ 声(はっきり、わかり易く伝える=丁寧な声かけ)
♢ 手(握り方の工夫で利用者の力がでてくる。例えば、腕相撲スタイル)
♢ らくらくシート(摩擦を減らすツルツルシート⇒ヨットの帆など)ゴミ袋
すべり止め(足の裏などに入れ、踏ん張りを効かす)
♢ シーツやタオルなど手の延長となるものを活用する。
デンマークという国・・・
・人口:547万人 面積:北海道の半分
・福祉の先進国
・幸福度:世界第1位(日本は何と90位だそうです・・・)
○デンマークでは、「国にとって最も大切なのは人、パワーの源は人!」が基本的な考え方で、
教育には最大の投資を図り、人的資源のレベルアップや徹底した活用策を講じるそうです。
・デンマークには男女共同参画という言葉はありません。なぜならば
女性が働くのはデンマークでは普通のことで、働きやすい労働環境
つくりにこだわる。
○財源は、働く人々から納められた税金で賄う。
○税金は、だいたい50%。 消費税=25%
○デンマークが決して楽をしていい思いをしているわけではない。過去、
様々な痛みを味わう中から現在の高福祉社会が築かれた。
※集めたお金は無駄なく使う※
◎デンマークにおける高齢者福祉の基本
○ケアの三原則
①自己決定(いつまでも自分らしく生きる)
*自分らしさは自分でしか作れない
②継続性(住み慣れた地域でいつまでも)
③残存機能の活用(個人的には残存という言葉は好きではありませんが)
*機能=資源 できる所には手を出さない
○利用者にも介護者にもやさしいケア
*辛さをやさしさに変えることが必要
○学校など教育の基本姿勢
*介護技術は現場で学び、学校ではコミュニカーションを中心に学ぶ
◎デンマークの「労働環境法」
○1977年施行、働く人たちの安全と健康を守る法律
*日本では「労働安全衛生法」が似ているが・・・
○全ての職場に職場判定が義務付けられている
○労働省、労働監督局が抜き打ち検査。スマイリーシステム(4段階評価)を
導入しH・P上で公表
○ ケア現場の課題として労災、衛生、屋内環境、働く姿勢などがあるが、
精神的な環境=心の部分も大切な労働環境
☆デンマークでは、1970年代~1990年代にかけて大不況に見舞われたそうです。当然のごとく医療費、福祉予算はカット、カット、カット。手っ取り早い方策として、入院日数の削減策が打ち出されました。(今の日本とよく似ているような気がします)
結局、デンマークではしっかり時間をかけて論議を重ね、医療の受け皿としての福祉の充実が図られたとのことです。
30年以上遅れているといわれる日本は、福祉先進国の良さをしっかり学ぶことはもちろんですが、福祉現場の実情もきちんと把握して福祉の充実に生かして欲しい・・・という声が会場から聞かれました。
それにしましても、集めたお金(税金)は無駄なく使う!
われわれ日本も見習いたいですね。